カミーノ上の世界遺産(2)

 (1)ではカミーノ前後に訪れた世界遺産とフランス人の道、北の道、銀の道にある世界遺産を紹介しました。(2)ではプリミティボの道にある世界遺産から紹介します。


◎プリミティボの道にある世界遺産

・オビエドの世界遺産

 オビエドはかつてのアストゥリアス王国があった首都ですから、重要な遺跡が幾つもあります。それらをひっくるめた建造物群が世界遺産に登録されています。サン・ミゲル・デ・リーリョ聖堂、オビエド大聖堂 正式名はサン・サルバドール大聖堂はプリミティボの道のスタート地点です



 2017年に銀の道を歩き終えてからオビエドにバスで向かいましたが、当てにしていた公営アルベルゲが閉鎖されていたので大聖堂どころじゃなくなったので訪れませんでした。それより今夜のねぐら確保の方が大事だったので。



 運良く近所のお婆ちゃんがもう一つアルベルゲがあるよと教えてくれたので真剣になって探し当てたのが写真のアルベルゲです。まるで砦のような入り口で、インターホンを鳴らすと中から遠隔操作でガチャッと鍵が開きました。



 ちなみに、フランス人の道にある大都市レオンからオビエドに至るカミーノがあって、大聖堂と同じ名前のサルバドルの道と言います。と言うよりサルバドル教会に至る道って意味なんかな。コロナがなかったら2021年に歩くルートでしたが、このカミーノを歩いてオビエドに到達すると大聖堂で特別な到達証を貰えるそうです。そのくらい険しいカミーノと言うらしいです。途中には写真の岩の間に建てられた修道院があるようです(カミーノ中毒のセルジオは訪れたそうです)。ここを歩くなら是非ここに立ち寄りたいですが、コロナで足止め食らっているので死ぬまでに行けるかな?


・ルーゴの世界遺産
 ルーゴにあるローマ時代の城壁は、2000年に世界遺産に登録されました。2世紀後半にこの地を侵略したローマ人によって建てられた 2,131mに及ぶ長大な城壁が現在も残っています。公営アルベルゲはこの城壁の中にありました。


 ルーゴのアルベルゲに泊めてもらいましたが、宿が決まったことに安心して城壁の上を歩けることをすっかり忘れてしまいました。勿体ないことをしました、次に訪れたら必ずリベンジします。



 プリミティボの道を歩いた人のブログを二つ読んでいたので、アルベルゲを見つけるのは楽勝だと思っていましたが、不思議なことに二つとも間違っていました。少し苦労してしまったので、地図付きでお知らせしてみます。こうしてみると道順は単純なんですけどね?



 ルーゴでは翌日にローマ時代の祭りがあると、街のあちこちにローマ兵士のコスプレしたポスターが張り出されていたので見たかったのですが、そうもしてられないので後ろ髪を引かれる思いで出発しました。



 市内のカミーノを辿ってルーゴの街から出るところにはこんな洒落た橋がありました。袂に立っているローマ兵士のマネキンが何とも嘘臭いですが、正真正銘のローマ時代の橋らしいです。ルーゴを出るとプリミティボの道はもう極端な上り下りは無くなり、山岳の道プリミティボは終わりに近くなります。

 ルーゴからは歩く人が若干増えた気がするのでサンチャゴまで100kmあるかと計算してみましたが、99.3kmと言う微妙な距離でした。じゃぁルーゴのちょっと手前から歩き始めれば巡礼証明書の条件をクリア出来ると思いますが、やったことないので自信はありません。ルーゴ手前には公営アルベルゲも幾つかあるし、そこでスタンプ貰っておけば大丈夫なんだと思います。きっとサンチャゴの巡礼事務所の人も心得ているでしょう。



◎マドリッドの道にある世界遺産

 マドリッドにあるエル・エスコリアルの修道院と王室用地は、1984年に登録された世界遺産です。王宮などは見物しましたがそっちは見ていません。王宮は立派ですが世界遺産にはなってないのかな?フランスのベルサイユ宮殿は世界遺産なのに。



 スペインはシニア割引が適用されている施設が殆どと思いますが、その気になって王宮のチケット売り場でもシニア割引をお願いしたら王宮だけはEU圏内の人だけだと言われてしまいました。でも、その後に訪れた人のブログでは有効だったそうなので、何だか分かりませんね。



 王宮と隣り合っているのはアルムデナ大聖堂ですが、こちらも特に世界遺産ではないようです。スペインって大きさもさることながら歴史的な建造物が軒並みあるので、いちいち世界遺産にしたら切りがないのでしょうか。暑い日だったので、ここの日陰の階段が気持ちよかったです。すみません世界遺産でもないのに二つも紹介して。


・セゴビアの世界遺産


 マドリッドを出発して早い人なら6日、私は7日目にセゴビアに到達しました。2年前にマドリッドからバスで観光に来たときは水道橋の向こう側がバスターミナルだったのですが、今回は反対側からセゴビアに侵入したので意外でした。きっと、昨日の雪の峠越えで大きく迂回したからかな。



 セゴビアは旧市街とローマ水道橋が世界遺産です。ローマ帝国時代の歴史的建築物の中でも特に水道橋やアルカサル、セゴビア大聖堂の保存状態が良く1985年に世界遺産に登録されました。ローマ時代の水道橋は幅2.4m、高さ30mもあり、長さは600m(だったかな?)もあります。セメントも重機もない時代に良くこんな物を作れたものだと呆れました(この場合の呆れたは感心したと同義ですw)。



 こんな巨大な建築を石だけでどうやって建てられるのだろうと不思議ですよね。ただ積み上げただけじゃ簡単に崩れる気がしますから私もずっと不思議でした。前年の2017年に歩いた銀の道で、一緒に行動していたフランス人3人に誘われて大きく回り道してオセイラの修道院を訪れましたが、そこの修道院ツアーで石作りの謎に触れることができました。



 石を積み重ねる工法って、ただ載せてるだけじゃなかったのです(まぁ当たり前だけど)。石の柱はレゴみたいにオス・メスで組み合わせていたのですよ。全ての石をこのように組み合わせたなら石自体の重量もあることだし、ちょっとやそっとで崩れないのが分かりました。こういうのを見たのは初めてだったので、これを見ただけでツアー代3ユーロの価値はありました。(日本円で400円弱)



 セゴビアの有名どころはローマの水道橋、カテドラル、アルカサルのみっつと決まっていて、それらはほぼ一直線に並んでいます。なので観光客も数珠繋ぎで1本の道を歩いています。何も知らなくても人の波に乗っていればみんな見ることができたので楽チンでした。ただ、2018年に巡礼で訪れた時は雨降りだったので、カッパの懐に入れといたタブレットがスルリと石畳の上に落ちてしまい、ガラス面に一本のヒビが入ってしまいました。ヒェーッと青くなりましたが使うのには問題なかったので安心しました。



 アルカサルはディズニー映画『白雪姫』のモデルになった美しいお城です。ここのチケットブースでは、自分の年齢を言うだけで「ムイビエン」と言われて割引チケットを売って貰えました。パスポートなんか不要でした。こういう所は大雑把なスペインは楽ですね。



 城の上からは赤土の荒野が広がっていて、いかにもスペインらしい風景が見えていました。上の写真で矢印で示した教会がありますが、2年後にあの隣の舗装路を歩いて次の村に行くことになるとは、この時は夢にも思いませんでした。このときマドリッドの道があることを知らなかったし。セゴビアにはアルベルゲが無いけど、次の村には公営アルベルゲがあったのでセゴビアはカテドラルだけ見て素通りでした。



 セゴビアから3日後にコカの町に到達します。Cocaにはスペインで一番保存状態が良いと噂の城がありますが、これは世界遺産には登録されてないようでした。セゴビアの城と比べても遜色ないように見えましたが、登録されないのは単に地元が世界遺産登録運動に興味がないだけなのかな?



 折角行ったけど開館時間前で入ることができませんでした。のんびり開くのを待っていると次の宿に着くのが遅くなってしまうので、一緒に行動していたボビーとバルで一杯コーヒー飲んだだけで素通りしました。ちょっと惜しかったです。



◎イギリス人の道にある世界遺産

 イギリス人の道の出発地は2カ所。ア・コルーニャとフェロールです。コルーニャのシンボルであるローマ時代に作られたヘラクレスの塔は世界遺産です。高さ57mあるこの塔は、西暦1世紀にベースが造られた歴史ある建造物です。当時の原型を残し、現代でも現役の灯台として使われているのは世界でここしかないそうです。



 手前のでっかい人型が英雄ヘラクレスのようです。ヘラクレスの塔は後ろにある丘の上に堂々と立っています。現在でも世界で一番高い灯台とか何とか。ヘラクレスの像は手前に写っているので塔より大きくなってるだけですよ、分かってると思いますが。w



 入場するとまず目にするのが1世紀に作られたと言う塔の底部です。これはいかにもローマ時代の遺跡という感じがします。



 ローマ時代の塔ですから勿論エレベーターなんかはありません。一段一段階段を歩いて上ります。途中には小部屋があって、当時はここにローマの兵士や灯台技術者なんかが詰めてたんかなーと想像しました。



 ア・コルーニャから出発してもサンチャゴで巡礼証明書を貰えるようですが、100キロないのでコルーニャ市民限定との噂があります。もう一つの出発地フェロールから歩き出せばサンチャゴまで120kmなので、フェロールを出発した方が間違いないと思います。フェロールからの巡礼路には世界遺産はありません。



◎サンティアゴ


 サンティアゴ・デ・コンポステーラの旧市街が丸ごと世界文化遺産です。エルサレムやローマのバチカンと共に、キリスト教の三大巡礼地のひとつです。巡礼の最盛期だった中世の時代には年間50万人が押し寄せたそうですが、現代でも年間30万人ほどが訪れます。コロナの今はどの程度なのか分かりませんが、スペインやポルトガルのカミーノ友達は今でも巡礼しているのをフェイスブックで発信してくれてます。



 サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路自体も世界遺産として登録されています。なので、サンチャゴ巡礼は毎日世界遺産の上を歩いていることになります。道が世界遺産に登録されているのはサンチャゴ巡礼の道と日本の熊野古道だけです。熊野古道は私も半端なルートを歩いてみましたが、事前の情報どおり出会ったのは外国人ばかりでした。折角日本にある世界遺産の道なのに意外だし残念でした。

 ところで、日本の四国遍路の道が世界遺産に登録されたいとまごまごしていますが、私個人の感想としては難しい気がします。理由は一言で言うと四国遍路は何しろ金が掛かり過ぎます。詳しく書くとディスる事になるので四国遍路については控えますが、カミーノで言えばフランス人の道の出発点SJPPには毎日何十人と言う巡礼が手続きに訪れますが、巡礼に役立つ冊子を戴け、一人一人に翌日のピレネー越えの注意点を丁寧に説明してくれます。最後にはその日の宿の心配までしてくれました。クレデンシャルやホタテ貝は1ユーロ2ユーロでしたが、その他は全部無料なんですよ。

 歩いている途中に教会や修道院が運営しているアルベルゲが沢山ありますが、殆どがドナティーボ(寄付)なので、自分の財布に応じて寄付できますし、多くは朝食などが提供されます。



 巡礼の到達点、サンチャゴ・フィステラ・ムシアの3カ所で立派な巡礼証明書を発行してくれます。写真は2019年に私が頂いた証明書ですが、これ全部無料なんですよ(距離証明書が欲しい人は3ユーロ必要)。何しろ全てが巡礼者のことを思ってくれているのがカミーノです。

 四国遍路の「お接待」文化は世界に誇れる素晴らしいものなのですから、他をもっと考えてくれたら世界遺産登録が近づくと思います。四国遍路の道がカミーノみたいになったら、歩き遍路はもっと増えるだろうし世界遺産にも登録されると思います。是非そうなって欲しいです。



 7月25日はサンチャゴの祝日で、お休みです。これはイギリス人の道にあったカレンダーで、日本では何処にでもあるカレンダーですが、スペインでカレンダーを見ることは滅多にありません。この7月25日が日曜と重なると、これが「聖年」となって大騒ぎになるようです。私は聖年には巡礼行きたくないな。



■ポルトガルには17の世界遺産

・リスボンの世界遺産

 リスボンには幾つかの世界遺産があります。航路開拓により得た巨額の富を贅沢に注いだ豪華絢爛なジェロニモス修道院、テージョ川を行き交う船の監視塔としての役割を担ったベレンの塔の2つの建造物が登録されています。



 ジェロニモス修道院は1581年にポルトガルを訪れた日本の天正遣欧少年使節団も訪れた歴史があります。ここの近くにはポルトガル名物のナタの老舗があって、伝統的なナタの製法はこの店だけが引き継いでいるとか何とか。


・トマールの世界遺産

 ポルトガル中部、トマールにある国内最大規模のキリスト教修道院です。トマールはリスボンを出発したサンチャゴ巡礼路上にあります。私はリスボン出発ではトマールを経由せずにファティマを目指し、サンチャゴからの逆歩きではアンシアオからトマールに向かわずに直接ファティマを目指したので2回ともトマールには泊まっていません。写真は2018年にツアーで訪れたものです。たはは



 12世紀にポルトガルのテンプル騎士団により建設され、のちにキリスト騎士団の本拠地となりました。15世紀以降の大航海時代の勢いとともに修道院は増改築を繰り返した結果、さまざまな建築様式がミックスされた建造物になっています。上の写真にそれらの建築様式がごちゃ混ぜに入っている典型的な壁だそうですが、当然のことながら細かい説明は覚えていません、すみません。

 ポルトガルはツアーでも訪れたことがありますが、ツアーで観光した世界遺産は割愛しました。トマールだけは巡礼で泊まろうとした町なので紹介に加えました。


・コインブラの世界遺産

 12~13世紀までポルトガルの首都だったコインブラ。ヨーロッパでもっとも伝統ある大学のひとつ、コインブラ大学はここにあります。コインブラ大学の制服は真っ黒いスーツとマントですが、運がいいとその出で立ちで学用品を売って学費の足しにする学生さんを見ることがあります。私は歩きで二度訪れてツアーで一度訪れましたが、ツアーの時だけ学用品売りのお嬢さんが出張っていました。ツアーが来たのがちゃんと分かるようです。写真の右上が学用品を売っている学生さん。



 大学が所在するアルタ地区、多くの学寮が設けられた下町のソフィア地区を含めたエリア全体が世界遺産に登録されています。


・ポルトの世界遺産
 リスボンに次ぐポルトガル第2の都市ポルト。ポルトには世界遺産が山盛りあります。


 サン・ベント駅、クレリゴスの塔、ポルト大聖堂などポルト観光には欠かせない必見スポットが広く世界遺産として登録されています。2016年にはドン・ルイスⅠ世橋と対岸の町にあるセラ・ド・ピラール修道院が登録名に追加されました。

 ポルトは巡礼の道の主要拠点なので、私は巡礼で3回、観光で2回訪れましたが、このサン・ベント駅には毎回立ち寄っています。理由は既に分かりますよね、無料の世界遺産だから。世界遺産なのに無料なのは良いことです。



 ポルト大聖堂の前庭に立っている柱ですが、これ何だと思いますか?罪人を吊すための柱だそうです。ポルトガルにはこういう柱があちこちにあるようです。引っかけるためのカギが4本あるので、4人同時に吊せたんでしょうか。怖いですね~。



 クレリゴスの塔はポルトの小高い位置に立っているので、ただでさえ高い塔が更に高く見えます。実際、遠くから見るとこの塔は飛び抜けて高いです。上に登るとポルトの町が360度で見えました。

 サンチャゴ巡礼路上にある世界遺産は以上になります。みなさんが近くを訪れたら私みたいに面倒がらずに見てさわって世界遺産を肌で感じでください。(おまえが言うな)